新規事業「エビ養殖」で販路開拓とブランディングを実現
ワボウ電子株式会社は、プリント基板設計や電子部品製造を中心とする製造業として長い歴史を持ちます。しかし、新型コロナウイルスの影響や市場環境の変化により、一部事業の見直しが必要となりました。その中で、新たな挑戦として開始したのが「陸上でのエビ養殖事業」です。この事業は技術的には成功を収めたものの、販路開拓や商品のブランディングといった点で課題を抱えていました。
滋賀県プロ人材拠点を通じて、商品ブランディングや販売戦略に長けた副業人材を採用したことで、これらの課題が解決に向かい、事業は次のフェーズへと進むことができました。
技術からビジネスへ:課題は「販売の壁」
同社の新規事業であるエビ養殖は、従来の事業とは異なる食品分野への進出というチャレンジでした。完全閉鎖型の陸上養殖という画期的な事業モデルは、エビの安定生産を可能にしましたが、最終消費者との接点が少ない企業にとって「販売の壁」が立ちはだかりました。
同社の社長は、「モノづくり企業としてエビを育てることには達成感があるが、販売を成功させなければ事業は完成しない」とし、プロフェッショナル人材の活用を決断。滋賀県プロ人材拠点に相談し、食品ブランディングやマーケティングに精通した人材を求めることで解決を図りました。
プロ人材によるブランディングと販路開拓
採用された松井氏は、東京を拠点に事業開発やマーケティングの経験を積んできたプロ人材です。異業種からの参画にもかかわらず、地元滋賀県の魅力を活かした食品事業のブランディングに挑戦。松井氏の活動により、以下のような成果が生まれました。
- ターゲット層の明確化と営業手法の刷新
従来の網羅的な営業から、明確なターゲット層を設定した営業に転換。商品特性を活かし、高付加価値な「高級エビ」として高級料亭や専門店へのアプローチを行いました。有力店舗との取引が新たな顧客を呼ぶ好循環を構築しました。 - 商品の魅力の言語化とストーリー構築
商品の特性や地域性を反映した魅力を明確にし、それを基に訴求力のあるストーリーを構築。これにより、他社との差別化が図られ、高価格帯市場でのブランド価値が向上しました。 - 販路確保と顧客満足度の向上
販路開拓を進める中で、品質を重視する顧客にリーチ。新型コロナの影響で売上増加には時間を要したものの、リピート購入が増え、売上が右肩上がりに成長しています。
社員の成長と組織の変革
松井氏の取り組みは、事業成果だけでなく、社内の意識改革にも大きな影響を与えました。最初は副業人材の受け入れに半信半疑だった社員たちも、松井氏の真摯な姿勢や実績を目の当たりにし、次第に積極的な姿勢に変化しました。
特に、ターゲット層の設定や商品の魅力を明確化する手法は、営業だけでなく、他のプロジェクトにも応用可能なスキルとして組織全体に波及しました。また、社員が自発的にアイデアを提案し行動する「自走型」の文化が芽生えつつあります。
地域資源を活かした新たな事業モデル
エビ養殖事業は、滋賀県の地域特性を活かした新たなビジネスモデルとして注目されています。完全閉鎖型陸上養殖は、持続可能性や環境への配慮といった観点からも社会的意義が大きく、地元経済への貢献も期待されています。
また、プロ人材の採用を通じて構築されたブランディングや営業手法は、他の企業にも適用可能な成功事例として広がりを見せています。
プロ人材活用による新たな可能性
今回の取り組みは、異業種のプロ人材がいかに企業の課題解決に寄与できるかを示す好例です。特に、新規事業における販路開拓やブランディングは、企業内だけでは解決が難しい課題であり、外部の視点が大きな役割を果たしました。
地域資源を活かした事業開発に取り組む企業にとって、この事例は貴重なインスピレーションとなるでしょう。同時に、企業がプロ人材を活用する際のポイントとして、明確な課題設定と人材選定の重要性が浮き彫りになっています。
プロ人材の力を借りて新たな事業を成功させたこの事例は、今後の地方創生や企業成長のモデルケースとして注目されることでしょう。