伝統の技術を世界へ:北米市場への販路拡大と従業員教育の挑戦

福井県越前市に拠点を置く龍泉刃物は、700年以上の歴史を誇る越前打刃物の技術を活かし、現代のニーズに応える刃物を製造・販売している企業です。特に、美しいデザインと優れた切れ味を兼ね備えたステーキナイフは、フランスの国際料理コンクールで注目を集め、国際的なブランドとして認知されるに至りました。

同社はこれまでヨーロッパを主な市場としてきましたが、新たに北米市場への販路拡大を目指し、海外マーケティングに精通したプロ人材を迎え入れることで、大きな成果を挙げています。

ヨーロッパから北米へ:新たな市場への挑戦

龍泉刃物が抱える課題は、販売後のメンテナンスが必要な製品特性に対応する仕組みを整えることでした。特に北米市場において、刃物の砥ぎやメンテナンス技術を持つ販売店の確保が急務となっていました。しかし、コロナ禍により海外渡航が制限される中、現地での販路拡大を進めるには、現地事情に詳しく広いネットワークを持つプロ人材の力が必要でした。

そこで、ふくいプロフェッショナル人材総合戦略拠点を通じて小野氏を採用。カナダを中心に販売店のリサーチと提携を進めることで、北米市場進出の基盤を構築しました。

プロ人材の活用で販路拡大を加速

小野氏は、旅館やホテル向けの訪日観光コンサルティングを本業とし、ウェブマーケティングや海外マーケットの知見を豊富に持つ人物です。同社では月2回のウェブ会議と2か月に1回の対面会議を通じて、具体的な課題解決に取り組みました。カナダ国内の販売店リストアップを進める中で、メンテナンスが可能な店舗との契約に成功。アメリカ国境に近い地域での成功事例は、将来的に北米全土への販路拡大を見据えた重要な一歩となっています。

従業員教育とブランド力強化

販路拡大と並行して、小野氏は従業員の海外輸出販売教育にも貢献しています。接客スキルの向上や海外顧客とのメール対応の質向上を目指し、遠隔での教育サポートを実施。これにより、初めての海外顧客に対しても商品の魅力を的確に伝えることが可能となり、ワンオーダーあたりの受注金額が向上しました。

さらに、従業員の商品への理解と意識向上が進むことで、社員一人ひとりがブランド価値を高める役割を担うようになっています。同社の海外事業売上は、令和2年比で2.4倍に成長。この成果は、北米市場での可能性を証明するものとなりました。

地域発信型のグローバル戦略

龍泉刃物の北米進出は、伝統産業がグローバル市場で新たな価値を見出す好例です。地域の強みである伝統技術に、現代のニーズに応じたマーケティングや販売戦略を組み合わせることで、新たな市場を切り開いています。

また、外部人材の知見を活かすことで、これまでにない発想やネットワークを取り入れ、既存社員への良い刺激となる環境を整えています。このような取り組みは、他の伝統産業や地域企業にも参考になる事例といえるでしょう。

未来への展望

北米市場における販路拡大を通じて、同社はブランド力をさらに高めるとともに、グローバル市場での地位を確立しつつあります。今後はカナダにとどまらず、アメリカ全土への展開を進め、さらなる成長を目指します。

龍泉刃物の挑戦は、伝統と革新が融合した成功例として、地域企業が持続可能な成長を実現する道を示しています。

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