副業・兼業プロ人材活用
プロボノ人材4人を活用。それぞれの強みを活かして新事業を模索
世界中のエッセンシャルオイルやハーブの輸入や国内での製造販売を手掛ける「株式会社ランド」。新しい事業の形を模索しようと「プロボノ」人材を活用しました。活用に至った経緯やその方法、実際の成果などについて、同社代表取締役社長 阿部 晃さんにお話を伺いました。
■会社概要についてお聞かせください。
株式会社ランドは、1992年10月1日に愛知県安城市に設立して以来、30年間、世界各国からエッセンシャルオイル(精油)を輸入して日本で製造販売する事業をしております。
はじめはロンドン、パリ、アメリカのベンダーから輸入していましたが、次第に中東やヨーロッパ、そして、アフリカからも直接輸入するようになりました。蒸留方法や装置の開発、植物の栽培なども含めて、ジェトロと一緒にいろいろと手掛けています。
マーチャンダイジング(商品化計画)が大きなテーマです。良い材料を使って良いものを作り、直営店10店舗でお客様へお届けするまでを徹底してやってきました。
2019年には、日本の素材を使って蒸留した“和精油”をつくろうと、新城市に奥三河蒸溜所を設立しました。地元のスギやヒノキなどの森林資源から始め、やがてユズやハッカなどの新しい植物を植えるなどして現在に至ります。
かつて蒸留されたことがないであろうシキミのエッセンシャルオイルなども手掛け、世界一の製品を展開していくことを目指しています。
■今回プロボノ人材を活用しようと思い立ったきっかけを教えてください。
愛知県プロフェッショナル人材戦略拠点さんが背中を押してくれました。
プロボノ人材は大手企業で育ってきた幹部クラスの方ばかりで、それぞれに違いがあります。企業文化や、大企業ならではのルール作り、考え方、扱うDX関連のツールなどを、それぞれから学べるところが良いですね。それらを我々の事業に活かせるところが面白いと感じ、活用させていただきました。
■プロボノ人材の導入にあたって、感じられたことはありましたか?
我々がプレゼンをして、興味を持ってくださった4人が集まりました。大手の製薬会社や保険会社などで勤務されている、素晴らしい方ばかりでした。
実は、過去に大企業の人材に入ってもらったことがあります。しかし、その人のスキルをどこに見出すかを判断するのが、とても難しいと感じました。
例えば、銀行の支店長の方が入ってきたからといって、経理をお願いするのは、少し違う。むしろ、営業部長のほうが適しているかもしれない。
固有のスキルを求めて、大企業の人材を1人選んでしまうと、その人のスキルに合わせないといけなくなります。
そこで今回は、スキルについてはフリーに考えてプロボノ人材に入っていただきました。そして、プロジェクトを進めるなかで、その人の強みを見出していったのです。
■今回、どのようなテーマに参画いただいたのでしょうか?
奥三河蒸留所で働く人がいて、そこを訪れるお客様がいます。「ランド」が輝くことで、奥三河を輝かせたいという想いがありました。そのためには何をしたいいのか、それが大きなテーマでした。
■40日間のプロジェクトをどのように進められたのでしょうか。
キックオフでは、プロボノ人材4人と顔合わせをして、お互いに自分のことや会社のこと、奥三河のことなどを語るところからから始め、一つのテーマに取り組んでみるなど、ソフトランディングしていきました。愛知県プロフェッショナル人材戦略拠点さんや人材会社の方にも入っていただいたこともあります。1回約2時間半の打ち合わせを、毎週行いました。
■各回で、宿題を各自で持ち帰って、その翌週に持ち寄るといったスタイルで進められたのでしょうか?
プロジェクトはオンラインで進め、各自でテーマを決めて、次にどのようにやっていこうか議論するなどしました。皆さん、本当に賢いと思いましね。独立してやっていけるくらいのポテンシャルを感じました。
■プロボノ人材を活用してどのようなアウトプットがありましたか。
40日間を通して、いろんなものを積み上げていきました。そのなかで、「香りのワンダーランド」をつくろうというアイデアが出たのです。
例えば、奥三河蒸溜所を中心に、ペットを連れて入れる場所や宿泊施設、みんなが集まって楽しめる長屋やキャンプ場などです。そのアイデアに対して、奥三河のどこで、どのようにやっていこうかをアウトプットして形にしていき、今、どんどん進めているところです。
■今後副業人材活用を検討される企業様へ、メッセージをお願いいたします。
中小企業は必ず活用した方がいいと思います。特に、社長自らがやってみることをおすすめします。そうしないと、なかなか会社の想いが伝わりませんから。
「こういうことをやってほしい」と結果だけを求めていては、全く面白くありません。
社長自身が何か大きなテーマを持って、左右上下に揺れながら、何か一つのものを作っていくことが重要です。
副業人材の活用は、どの業種、どの中小企業でもやってみるべきだと思いますし、この経験を通して中小企業は強くなっていくのではないでしょうか。
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