副業・兼業プロ人材活用
副業人材活用の失敗があったからこその躍進
副業プロ人材を活用し、新商品開発に取り組んだ「側島製罐株式会社」。副業人材活用に至った経緯や成果について、2020年にUターン入社され多くの新規プロジェクトを推進されている石川貴也さんにお話を伺いました。
■会社概要についてお聞かせください。
創業117年になる缶メーカーです。「一般缶」と呼ばれる汎用性の高いもので、雑貨やクッキー、海苔、カーワックスなどに使われています。デザインや形もさまざまで、意匠性の高い包装資材を作っています。
■石川さんは元々日本政策金融公庫や内閣官房等で働かれていましたが、なぜ同社へ転職されたのでしょうか。
前職の仕事は楽しかったですし、安定した収入も社会的ステータスもありました。しかし、多くの中小企業へ出向して地方創生や金融、人材の政策などを行うなかで、中小企業の人手不足を認識しました。継ぐ人がいなければ事業承継はできないし、売却したら会社が変わります。こうした状況を見て見ぬふりをして、死屍累々の上に自分の人生を成り立たせるのが嫌でした。
■副業兼業人材を活用しようと思い立ったきっかけを教えてください。
入社して半年ぐらい経ったころ、愛知県プロフェッショナル人材戦略拠点さん主催の「副業人材活用」セミナーに参加し副業人材のことを知ったのがきっかけです。
弊社はBtoBの下請けで売り上げは20年間下がり続け、直近では大赤字の状況。何とかして活路を見出そうと模索していました。
■副業人材活用についてはどのポイントに魅力を感じられましたか?
会社の一員として、副業人材さんに手を動かしていただけるところが魅力でした。
みんな、新しい事業を始めるべきだとわかっていましたが、自信もお金もないし、人もいない。商品開発やマーケティング、新規事業の作り方の知見もないので踏み切れなかったのです。新商品開発に挑戦するのであれば、その道のプロ、かつ実務を回せる人に頼むほうがいいと考えました。
■募集を開始してすぐに20人以上の応募が集まりましたが、どのような方がいらっしゃいましたか?
面談の段階からできそうなことを提案してくださった2人の方と契約しました。1人は30半ばぐらいのIT企業の社長さんで、もう1人は大手電機メーカーの研究員で40代の方です。
■初めての副業人材活用で、人材紹介会社を使ってみていかがでしたか?
使いやすいシステムでしたし、愛知県プロフェッショナル人材戦略拠点さんのご支援もあってスムーズでした。
■副業人材とはオンラインで、月数回の会議をしながら進められたと伺いましたが、具体的にどのような内容でしたか?
IT企業の社長の方はマーケティングや新規事業に強かったので、OEMと組んで「缶屋さんが作ったクッキー缶」をつくってみたら面白いのではないかという話になりました。電機メーカーの方とは、缶の中にUVライトを仕込んだマスク殺菌缶を企画しました。
しかし、どちらも商品化しなかったんです。お菓子缶開発では試食会などいろいろとしたのですが、明確なブランド価値がなく、そもそもお菓子で勝つのは厳しいという意見が出ました。殺菌缶については現物を一緒に見ずに議論を進めるのは困難でした。
計算ができていなかったし、考えが甘かった。アイデアだけ出して、副業人材さんに丸投げした形になってしまい、本当に申し訳なかったと思います。
■副業人材の活用によって得られた学びを教えてください。
副業人材と目線を合わせることができず、自分たちの力不足を感じました。プロ人材の目線で事業を進めないと外部から入っていただく意味がないのに、そこにたどり着けなかったことが反省点です。
また、「何のためにやるのか」が明確になっていないことに気づきました。自分たちに新しいことをするノウハウや経験値が足りておらず、副業人材活用のフェーズに立っていなかったことも認識しました。自分たちが先に成功体験を作らないといけないし、そうでないとゴールが見えず徒労感が残りますよ。
ただ、この失敗を通して次のステップに進めたので、無駄なことは一つもありませんでした。
この経験がMission Vision Valueを策定するプロジェクトにつながりました。
▼本プロジェクトの詳細はこちら
https://note.com/lwitbr1906/n/nadc68bc6b3ee
■副業人材活用を経た今、今後の展望をお聞かせください。
理念がないところに人は集まらないし、熱量も生まれません。自分たちが何者で、何のために仕事をして、何をしたいのか。その世界観に共感して「一緒にやろう」という人たちを集めない限りいいものは生み出せない。
何となく売れるものを作っても社会にとって価値がありません。自分たちが得するだけの仕事なんか楽しくないし、事業をする意味ないと心の底から思います。
僕も入社して3年も経ったので、もう経営者赤ちゃんなんて言っていられません。今度こそ次のフェーズへ進んでいきたいと思っています。
※以下記事で同社の取り組みをご覧になれます。
▼2022年に側島製罐がやったことまとめ
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